原告第2準備書面要旨陳述

 

2010年4月11日

弁護士 畑地雅之

 

 

 原告第2準備書面では、被告2月2日付準備書面(2)に対する認否と、被告の主張に対する反論を述べております。被告の主張に対する反論としては、大きく分けて2点あります。

 

 まず、1点目は、原告の業務姿勢についてであります。被告は、原告の3年間の働きぶりを個別にとりあげ、原告のSLCの「運営への積極的姿勢は皆無であると評価された」とか、与えられた「業務を一切行わなかった」などと、さも原告の業務姿勢に問題があったかのように主張しています。

被告は、「SLCが閉鎖した」という被告の主張(※原告は、SLCが機能不全だとか閉鎖しただとかという被告の主張を争うものでありますが)に関連して、原告の業務姿勢を取り上げています。被告は、このSLC閉鎖の原因には二つあって、一つは被告経済学部内部の問題であるが、もう一つは、原告ら助手の業務姿勢にも問題があった旨を主張しているのです。

そして、被告は、原告も特別任用教員助手として「SLCのあり方に対して責任を持って行動していく義務があった」のにもかかわらず、その義務を果たさなかったと主張しています。

しかし、まずもって、「SLCのあり方」などという、いわば経営責任の一端まで負わなければならないような地位に原告があるわけではありません。原告は、教授会に発言を持たない「助手」であります。原告は、助手という職分の範囲内において、与えられた業務に従事する義務があるに過ぎません。

そして、被告は、原告の働きぶりを個別にとりあげて非難していますが、個別の問題についての詳細はここでは省略しますが、被告の主張はいずれも、事実関係を正確にとらえておらず、かつ、一面的な評価に基づく主張であります。

原告は、2007年度から09年度までの3年間、学生に対する学習支援にも努めてきたし、SLCを活性化すべく、SLC講座という課外講座の実施やフィールドワーク実習に関する調査活動や企画づくりなど、原告なりに積極的な活動や提案を随時行ってきており、その姿勢は決して消極的なものではありませんでした。

また、SLCの主な業務であるフィールドワーク実習に関しては、1年目と2年目については海外へのフィールドワーク実習が実現しませんでしたが、3年目には、最終的に10名の学生がスタディーツアーに参加するという形で、フィールドワーク実習が形となる成果を得ました。この成果は、学生向けのビラを作成したり、また作成したビラを、講義やゼミの教室で2000枚以上一人で配布したり、説明会に参加してきた学生らの相談に乗ったりした原告の働きによるところが大きいのです。

このように、原告は、経済学部の特別任用教員助手として、一貫して、経済学部における「参画型・体験型教育」の実践が発展するよう、助手の職分の範囲内において、積極的な姿勢で種々の業務に従事してきたものであります。

しかし、その過程で、原告による提案や活動が、SLC管理運営委員長である教務主任や、一部の運営委員の言動によってことごとく否定されてきたという事情があります。SLCについて、仮に、被告が主張するように、被告が期待していた結果が得られていないという側面があるとしても、期待していた結果が得られなかったことについて、原告の業務姿勢に何らかの要因があるとはいえません。

 

2点目は、被告が、本件雇い止めには合理性・社会的相当性があると主張していることに対する反論です。

まず、被告は、「SLCの機能不全」または「SLCが閉鎖」を理由にあげていますが、原告は、本件雇い止めの通告を受けた時点で、このような説明は一切受けておりません。その直前の経済学部教授会でもSLCを閉鎖する旨の決定はされていないどころか、SLCを存続させることを確認しています。また、教授会では原告ら助手の人事評価についても全く議論されていません。

次に、被告は、随所に「SLCの閉鎖」という表現を用いて、本件雇い止めを合理化していますが、原告が雇い止めの通告を受けた時点はおろか、原告が雇い止めされた2010年4月時点においても、被告においてSLCを閉鎖する旨の決定はなされておらず、このような「閉鎖」という表現は事実に反します。

さらに、被告は「SLCが閉鎖された以上、原告が働くべき場所は、もはや被告には存在しない」と主張していますが、仮にSLCが存続しなくとも、原告が担ってきた業務内容が全て消滅するわけではありません。むしろ、現在においても、参画型・体験型教育の実践は被告経済学部において継続されており、原告が担うべき業務の需要自体は存在しています。にもかかわらず、被告は、SLCがなくとも原告が働ける体制づくりや配転可能性等を検討すらせず、もって原告の雇止めを回避する努力を怠ったものであります。

なお、原告としては、本件雇止めが整理解雇に該当することを認めるものではありませんがが、被告が整理解雇の4要件に則して、本件雇止めの合理性・社会的相当性を論じていますので、その点について反論します。

(1)人員削減の必要性がないこと

被告は、平成21年度の決算に基づき、株式会社格付投資情報センター(R&I)による評価を受け、「AA-(ダブルAマイナス)」(方向性:安定的)の格付けを維持しています。かかる安定した財務状況のもと、あえて原告を雇止めにする必要性は全くありません。

(2)雇止め回避の努力をしていないこと

先ほども申し上げましたとおり、SLCがなくとも原告の業務が消滅するわけではないのにもかかわらず、被告において、雇止め回避の努力は何らされていません。

(3)人員選定の妥当性

先ほども申し上げましたとおり、被告経済学部教授会は、原告を雇止めするにあたって、原告の勤務成績、態度等についての人事評価などは一切しておらず、人員選定の基礎を欠いています。原告の業務姿勢については、本訴訟に至って初めて主張されたものであります。

(4)本件雇止め手続の妥当性

 被告は、比較的早期に雇止めを通告した、と主張していますが、早く通告したからといって、本件雇止めの手続を妥当ならしめる事情には全くなりえません。また、被告は、教職員組合を交えた協議においても、抽象的説明に終始し、十分な説明義務を尽くしてきませんでした。

 

 以上のとおり、本件雇止めは、客観的に合理的な理由はなく、社会通念上著しく不相当であるから、解雇権濫用法理の類推適用により無効であります。